2023/12/26 活動報告
イヴ・サンローラン展とシルク
イヴ・サンローランは21歳という若さでクリスチャン・ディオールの後継者として半世紀に渡りモードの第一線で活躍したデザイナーとして知られています。今年、国立新美術館でイヴ・サンローラン没後日本で初めて大回顧展が開催されました。彼がディオールのコレクションでデビューし、自身のブランドで成功した初のコレクション、名立たる絵画の巨匠たちの芸術作品へのオマージュ、舞台芸術への衣装やスケッチ、ウエディングドレスなど、時代を超えた代表的なスタイルが紹介されていました。
イヴ・サンローランはトレンチコートやピーコート、チュニック、パンタロンなどにメンズウェアや日常着のスタイルを取り入れ、女性が着やすいシンプルなデザインとして表現し、ファッション界に改革を起こしました。さらに、タキシードやパンツスーツ、サファリジャケットなどのパンツスタイルは、当時の保守的な習慣から女性を解放するシンボルとなり、こうした自立した魅力的な女性らしさを表現するスタイルがメゾンの一貫したテーマとなりました。
これらのコートやジャケット、スーツに合わせるシャツやスラックスなどにも、当社が定番商品として扱うシルクシャンタンやサテン、シフォン、デシンなどが多く使われています。メンズの要素を取り入れたアイテムに繊細なシルク素材を合わせることで、より女性らしいエレガントなスタイルになっています。
また、多くの作品に表情のあるシルク素材が用いられています。例えば黒のフォーマルドレスには12匁の小千谷楊柳(A3369)、プリント入りシルクシフォンのブラウスにはラメドットシフォン(E3296)、ウエディング・ガウンには21匁フクレジャガード(A6141-413)、映画の衣装に使われたドレスの表地として18.5匁ボーダーサテンなど、当社が現在扱う商品の似寄りの製品が多く見られました。
全ての作品について、刺繍や生地、染色などにイヴ・サンローランの仕事を支えたヨーロッパの職人の技術の高さを感じます。現在では品質の維持が難しいシルクパイルのベルベットや美しい抜染の技術に衝撃を受けました。
このような作品を間近で見て、創造の世界やファッションの奥深さを感じることができ、シルクの可能性も再認識することができました。シルクはイヴ・サンローランのような高級なメゾンのコレクションでも多く用いられる素材であると同時に、今日ではその機能性に注目されデイリーシルクとしても広まりつつあります。当社はシルクの専門商社としてシルクの可能性を伝え、今後もシルクに関する情報を発信してまいります。
2023/12/04 活動報告
JETRO商談会 in大阪
JETRO大阪本部主催の欧米バイヤー招へい型テキスタイル商談会に出展しました。
この商談会は日本国内で海外の有名なメゾンと商談できる貴重な機会で、コロナ前の2019年以来4年ぶりの参加となります。
商談会は11月28日~29日の2日間で開催され、同興商事は29日の午後からの部に出展しました。
今回は欧米のメゾン5社が商談会に参加されました。25年SS向けに加工もののハンガー、P下のサンプルbook、カラーストックサンプルを準備し、マップを作成して提案しました。
春夏用のフォーマルのシャツやドレス、スカートに薄手のシルク素材をピックアップされたり、綿シルクなどシルク混の素材を好んで選ばれたところもありました。
今回、商談会に参加して欧米の有名なメゾンの方にシルクを実際に手に取っていただき、シルクの良さを直接伝えることができましたし、当社の商品を高く評価していただくことができました。
今後もこのような機会がありましたら積極的に参加していきたいと考えています。
2023/09/29 活動報告
中国工場視察
コロナ禍以来4年ぶりに中国に出張しました。
到着早々感じた中国の変化は電気自動車の普及です。
世界有数のCO2排出国である中国は、CO2排出量のピークアウト、さらにはカーボンニュートラルの実現を目指して、植林政策による国土の緑化や電気自動車などの新エネルギー車の普及を積極的に進めています。
実際に空港から市内に向かう道でも、緑のナンバーをつけた電気自動車を多く目にしました。
今回の出張の目的は中国にある子会社と子会社工場、提携工場の視察です。
製品の縫製工場、生地の織工場、ニットの工場、染工場を訪ねました。
また、今回は入社3年目の生産管理のスタッフが同行し、研修的な意味合いも兼ねておりました。普段は、電話やメールで発注や様々な指示を行っておりますが、現地の工場のスタッフと直接会って話をしたり、実際に現場や機械を見ることで、多くのことを学ぶということも今回の大きな目的の1つでした。
現地の子会社縫製工場です。
裁断の前に生地の検反を行います。
生地を裁断していきます。
縫製の現場です。
裁断後のパーツを前段階で芯貼り、テープ貼りをしてラインに流していきます。
たくさん工員さんがいらっしゃいますが、選りすぐりのメンバーが当社の縫製を行っています。
固定の担当者を置くことで、当社と当社の顧客の特徴を理解した上で、細かい指示や変更にも都度対応してもらっています。
提携している織工場を訪ねました。
原料の生糸が入荷すると目的に合った糸種を選定したり、次の工程で区別するために仮にサインカラーを付けます。
また、生糸を柔らかくして撚糸しやすいように夏は75℃のお湯に油剤や界面活性剤を入れて浸します。経糸と緯糸では浸す薬剤は異なります。
お湯を使うので部屋はとても蒸し暑いです。
下漬けした糸を乾燥させます。
乾燥後、ボビンに巻き取ります。
原料の質が良くないと、糸切れして巻き取り機が止まっているところが多くなります。
必要な規格の太さに合わせるため、何本かの糸を合わせます。
糸に撚りをかけます。
この後、蒸気の缶に入れ、蒸すことにより撚りが戻るのを防ぎます。
織布、糸精練、染色など用途に応じてボビン、コーン、綛に巻き上げて仕立てます。
整経は経糸に使用する糸の準備工程で、織準備の最終段階です。
規格により必要な本数の多数の糸を同じ張力で、平行に、一定の速度で太いビーム巻き取ります。
整経が終ったら織工程です。
上の写真は3巾での製織です。3反を同時に織り上げ、織上った後につなぎ目でカットして3反に分けます。
生機で検反、補修の後、練り工場へ出荷します。
練り工場へ行く生機は、機折れにならないように全て巻きで出荷されます。
練り上がりをさらに検反、補修します。
まず検反機で確認した後、サテンのネップなど小さな不良個所は手で補修します。1反につき2人で2時間もかかる、とても丁寧な仕事です。
保管して出荷します。
お客様の要望に応じますが、練り上がりの保管方法は生地の特性により巻きなのか畳みなのか異なります。基本的にはデシン系は巻にするとモワレになることがあるため、ヤール畳で保管しますが、サテン系は巻きで保管します。
提携している染工場を訪ねました。
以前使われていた液流の染色機はほとんど動いておらず、節水省エネの染色機が主流となっているそうです。
・ビーム染色機
穴の開いた円筒に生地を巻きつけて固定します。染色液を循環させながら染色する高温高圧の染色方法。
生地を固定しているのでシワが入りにくい加工です。
・ジッガー染色機
染色液の中で生地の巻き取りを繰り返して染色する節水、省エネタイプの染色機。
プリントについても、従来のスクリーンやロータリーを用いた捺染ではなく、中国でもインクジェットプリントが主流になっています。
世界の動きに合わせて、中国の繊維業界もサスティナブルを意識した加工方法に移行しているようです。
縫製工場、生地の織工場、染工場と視察を終えて、今回の中国出張は当社の生産管理のスタッフが実際の現場を見て、工場の様子を確認したり、担当者と直接話をしたことにより、工場との連携を強化でき、トレーサビリティを実現する上でも有意義なものとなりました。
また、工場が環境負荷の少ない加工方法に移行していることを今回確認することができました。当社もサスティナブルな社会実現に向けた取り組みについて、引き続き考えていきたいと思います。
2023/06/20 活動報告
ITMA(国際繊維機械展示会)を視察しました
世界で最も影響力のある繊維および衣料技術の展示会ITMA(国際繊維機械展示会)を視察しました。ITMAは4年に1度の展示会で2023年はイタリアのミラノで開催されました。繊維および衣料技術の世界のトップメーカーが<先端材料>、<自動化とデジタルの未来>、<革新的なテクノロジー>、<持続可能性と循環性>の4つの柱で改革を発表する場となっています。
当社は自社工場を持っているわけではなく、直接的に機械を購入することはありませんが、当社が取引している工場がどんな機械を選ぶのか、また繊維業界の物づくりが今後どんな方向に向かっていくのかという視点で、展示会場を視察しました。
今回のテーマは「未来を形にする」です。
サスティナブルが前回以上に大きなテーマとなっており、各企業が共通して「水を使わない」「空気を汚さない」「電気化」「省エネ」といった具体的な目標を掲げていました。
特にテキスタイル向けのインクジェットプリンターについては、前回までは各社が高速機の開発で生産のスピードを競っていましたが、今回はサスティナブルを前面に出すところが多く、顔料プリントに関しては水をほとんど使わない顔料プリントや前処理不要の顔料インクなど、昇華転写プリントについては水を使わないドライプロセスとして注目されていました。
視察を終え、環境負荷ゼロの生産は難しくとも、世界の動きに合わせ繊維業界が向かう方向性をはっきりと見ることができました。そして、自社工場を持たない当社にできるサスティナブルな社会実現のための取組とは何かを考えた時、同興商事としては、より環境負荷の少ない生産方法、またそれを選んでいる工場との取引を選択していくことではないかと考えます。
今後もこういった繊維業界の動きに注目し、私たちが暮らす地球環境を守り、末永く生き続けられる社会の実現のためにより良い選択肢を選んでいきたいと思います。
2023/03/24 活動報告
日本で企画したシルクを海外へ
コロナから3年が過ぎ、日本も世界に遅れつつも日常を取り戻す中で、当社も3年ぶりに海外へ出かけました。
バングラデシュでは日本向けのシルクに関心が高く、今回の出張で私たちが日本で企画したシルクをバングラデシュのお客様に紹介する機会を得ることができました。
今後もチャンスがあれば同興商事のシルクの良さを海外のコンバーターさんに知っていただき、日本企画のシルクのクオリティの高さを海外の消費者にも発信してきたいと考えています。
2023/03/10 活動報告
脱炭素社会実現への取り組み
シルクは商品の生産や廃棄時に二酸化炭素を大気中に排出しますが、蚕の餌となる桑の木の成長過程において、光合成により二酸化炭素を吸収します。
二酸化炭素の排出と吸収により相殺されると考えると、全体で見た際の二酸化炭素排出量は大きく削減されます。
ただし、生産過程だけではなく輸送による二酸化炭素の排出を考えると排出量が全く増えないというわけではありません。
輸送による二酸化炭素の排出量を考えた時、より排出量の少ない輸送手段を使うことも私たちにできるサスティナビリティへの取り組みだと考えています。
当社は従来、輸送のスピードや利便性を考え、物流を航空輸送に頼って参りましたが、一般的には航空輸送は二酸化炭素の排出量が海上輸送の4倍以上と言われており、できる限り海上輸送に切り替えてまいりました。
生地の輸入に関しては2018年~2022年の5年間で、航空輸送を全体の輸入重量の65%から18%に削減致しました。
今後は、航空輸送においても燃費の良い機体の使用や二酸化炭素を大幅に削減できるバイオ燃料の使用など脱炭素社会に向けた取り組みが進んでゆくことが期待されています。
同興商事は脱炭素社会実現に向けより良い方法を選択し、可能な取り組みを引き続き行います。
2022/06/27 活動報告
国内最大の生糸の製糸工場『碓氷製糸株式会社さん』を訪ねました
生糸製造過程、国産繭、生糸の現状確認のため、群馬県安中市にある碓氷製糸株式会社さんの工場見学に参加しました。
富岡製糸場さんが1872年(明治5年)日本で最初の官営模範工場が誕生して以来、明治大正を通じて日本各地に様々な製糸工場が誕生し、ピーク時の1951年には全国に288件あった製糸場が現在はわずか4社。その中で大型機械製糸場で国内製糸の6割を生産するのが碓氷製糸さんです。
群馬県碓氷近隣農家が出荷する繭のみを加工し続けてきましたが全国的な養蚕農家の減少、他の製糸工場の閉鎖を受けた他県からの繭を受け付けているそうです。
現在の全国養蚕農家が約200戸弱、一戸当たりの収繭量が350㎏として全国年間繭生産量約70t、生糸生産量約10tと予測されます。
日本の蚕糸業と絹文化の伝統を受け継ぎ日本中から届く繭がどのようにして生糸となるかその工程を8つに分けてご紹介します。
①繭荷受
②繭乾燥 (蛾の発生とカビを防ぎ長期保存するため熱風で5~6時間乾燥する)
③貯繭(乾燥した繭を蚕品種毎、蚕期毎に分けて繭倉庫に保管)
2022/04/15 活動報告
インターンシップを受入れました
京都芸術デザイン専門学校さんからインターンシップを受入れました。
社会経験や就職体験を通して将来のキャリアプランを考えるきっかけを作り、就職活動に対する目標意識や意欲の向上を目指すという学校側の趣旨に賛同して、今回の受入れを決めました。
同興商事としても次世代を担う新卒の採用が大きな命題となっていて、インターンシップが若い世代にシルクや繊維業界を知ってもらうきっかけになればと思っていたところ、シルクに興味を持ってくれた生徒さんが一人応募してくれました。
まずは実際にシルクに触れる機会を作ることと、そして2週間という短い期間の中で何か達成感を感じてもらえたらと考え、リストアップされたニューヨークの代理店向けのハンガーサンプルを準備するというお仕事をしていただきました。具体的にはリストの生地を棚からピックアップし、アイロンをあててハンガーを作成するという作業です。
作業の目的を理解し、真面目に効率よく作業をしていただき、期間内に89点全てのハンガーを揃えてもらいました。自分が作ったハンガーサンプルを、ニューヨークのお客様が手に取って注文をしてくれる。それを想像しながら作業してくれたら、仕事の楽しさが少しわかってもらえたのではないかなと感じます。
若い方がシルクに触れる機会は少ないと思いますが、今回生徒さんは実際に毎日手に取ってみて、広げたりカットしたりする中で、シルクの質感がよくわかり、織り方や加工による風合いの変化で色々なものに使われる可能性があることなどが実感できたようです。
また、自社ブランドの会議にも参加し、企画の進め方なども実際に見ることができ、良い経験になったようです。
同興商事のように一つのものに特化した商品を扱う仕事は、他社にないものを提供できる強みがある代わりに、スタッフは専門的な知識やスキル求められます。今回のインターンを通じて、よりよいモノづくりをするためには、自分が何をしたいか、ゴールを決めて行動することで、結果自身のスキルを高めることにつながるという社会人として必要なことも学べたようです。
また、京都本社はスタッフが全員40代以上で、これまで中途採用の方を受入れた経験はありますが、社会経験のない真っ新な若い生徒さんにもわかるように説明して作業をしてもらうことは、私たちスタッフにとっても少ない経験で、とても勉強になりました。
今回のインターンシップは生徒さんにとっても、当社のスタッフにとっても有意義なものとなりました。またご縁があればインターンシップの生徒さんに来ていただく機会を作り、これからもシルクや繊維業界のことを少しでも知ってもらう場を提供できたらと思います。
2021/07/09 活動報告
ワークショップ『繭から糸を挽く』に参加しました
京都のHONDA SILK WORKSさんにて開催されましたワークショップ『繭から糸を挽く』に社外研修として参加しました。
2年目の若手社員が、これまで映像で見たり先輩や上司から聞いたりしたことを実際に体験することで、シルクのすばらしさやシルクを扱う仕事の楽しさを再認識することができました。
研修参加者がとてもわかりやすくまとめてくれましたので、ご紹介致します。
①繭を茹でてセリシン(蚕が糸を吐くときに出される糊)を溶かす
②座繰り機(繭から糸を挽く機械)を使い糸を挽く
③木枠に巻き取った絹糸をかせあげ機でかせ(一定の大きさの束)にする
④かせにした糸の束を水で洗い、混合物を取り除く
2021/06/18 活動報告
はぎれ販売を始めました
弊社では生産する際に出来上がった生地を確かめる為に毎度、工場より生地の反端を取り寄せ品質のチェックを行います。
この反端の有効利用方法としてビーカーをとったりお客様に提案するサンプル作成に利用してきました。
新たな取り組みとしてさらなる利用価値を求めシルクの反端を必要としてもらえる方へ格安でのはぎれ販売を始めることに致しました。
今後も「作る責任・使う責任」実現の為に無駄のない生産活動を行っていきます。
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